・模型イベント「なごフェス」
こんにちは、ニル・エットです。
私が主催を務める「なごフェス」はコトブキヤ製のフレームアームズ・ガール、メガミデバイスを中心とし、現在は各プラモデルメーカーより展開されている美少女キャラクターのプラモデル(美少女プラモデル)を展示して意見交換を行う、オフ会イベントになります。
今回、カートイワークス様より「模型イベントの主催をやってみての裏話」というテーマで記事執筆依頼を頂きました。
そもそも模型イベントとは何なのでしょうか?私は静岡ホビーショーの様な企業、模型サークルが卓を並べる大手展示会、ワンダーフェスティバルの様なガレージキットの展示即売会を連想しました。
好きなジャンルのプラモデルを持ち寄り好きに遊ぶ、これをはたして模型イベントと言ってよいものなのでしょうか?そんな疑問を持ちながらも興味のあるテーマだった事と「なごフェス」をもっと多くの方に知ってほしいと言う想いから依頼を受ける事にしました。
ふとしたきっかけで始めたオフ会が、多くの方々との出会いを通じて、模型イベント「なごフェス」として成り立って行くまでの経緯を私自身の想いも織り交ぜながらお話ししたいと思います。
・自己紹介
ニル・エットというモデラー名で模型製作を行なっております。美少女プラモデルをより多くの方に知ってもらう為、製作活動を通じて知り合った仲間と共にイベントを行なったり、展示会で美少女プラモデルのコンペや企画卓に参加したりしています。
美少女プラモデルの魅力はその多彩な魅せ方にあります。そのまま組み立てても可愛いですし、他のキットとのミキシングを行いオリジナル武装にするもよし。ドール服を着せて素敵にアレンジ。ビネット調にして世界観を作り込むなんてことも出来ます。
そんな美少女プラモデルの魅力に惹かれて2015年から本格的にモデラー活動を始めました。そんな私が初めて塗装まで行って完成させたのもフレームアームズ・ガールでした。現在では模型雑誌「月刊ホビージャパン」でライターとして作品を掲載させて頂いております。
・美少女プラモとの出会い
私の模型歴はそんなに長くはありません。
もともとはコナミデジタルエンタテインメントから発売されていた、武装神姫というアクションフィギュアの愛好家でした。
プラモデルはといえば、ガンプラを作って飾っていた程度です。塗装もしてはいたのですが、筆を使ってディテールを塗るくらいでした。
そんな時、コトブキヤから発表されたのが美少女プラモデルの皮切りとなる「フレームアームズ・ガール」です。ロボットプラモデルとして発売されていたフレームアームズを島田フミカネ氏が擬人化を行い、第一弾として登場した"轟雷"には衝撃を受けました。
メカ少女(機械の武装を身に纏った女の子)が好きだった私は待ってましたとばかりに飛び付きました。
作ってみると、フレームアームズの装甲をしっかり保ちながらも、女性らしいプロポーションも備えている。可動の幅も広く動かしても遊べる素晴らしいキットでした。
そして、第二弾としてスティレットが発売された頃、コトブキヤ主催で開催されたのが「フレームアームズ・ガール・ユニバース2015」という模型のコンテスト。目標があった方がモチベーションも上がるだろうと思い、試しに参加してみる事にしました。製作工程を誰かに見てもらいたくてTwitterを始めたのもこの頃です。
最初はどう作ったらよいのかも分からない所から、Twitterで意見を聞いたり、フォロワーさんの作品を見ながら試行錯誤の末に何とか完成。
初めての完成品、そして初めてのコンテストへの参加でした。
作品を投稿して1ヶ月ほどした頃、コトブキヤからメールが…なんと佳作入選。「やったー!!」と思わず腕を突き上げて喜びました。自分が作ったプラモデルが評価された、喜びと驚きで心臓の鼓動が高鳴っているのを感じました。
この美少女プラモデルなら自分の思い描いた世界が表現できるかもしれない…
そんな事を考えながら、次の作品を作り始めていました。
・模型イベント開催のきっかけ
2018年初旬、私は仕事のストレスから"うつ病"になり大好きな模型も手に付かない状態になっていました。何気なくTwitterでその事を呟くと、「身体を大切にして下さい。」、「今はゆっくり休んで下さい。」といったお声がけをいただきました。
その優しい言葉がずいぶんと支えになってくれた事を今でもよく覚えています。そして、この頃からTwitterを通じて知り合った仲間と直接会って話してみたい、という気持ちが強くなっていきました。
そんな折に開催されたのが「関西コトオフ」と言う模型イベント。こちらは模型雑誌「月刊モデルグラフィックス」でライターをしていた”keiさん”が主催となり、大阪を中心に活動されているモデラーさんやTwitterの仲間が多く参加するイベントです。
私は『これは是が非でも参加するしかない。』と思い、募集ページに参加表明。開催日には、まだ見ぬ新天地を求めるような気分で新幹線に乗り込みました。
会場前にはすでに人集りが、Twitterで交流があるとは言え実際に顔が分からないのでとりあえず列に並びます。隣で大きなスーツケースを持った方に「こんにちは、ニル・エットといいます。」と話しかけ、すぐに意気投合。その流れで会場になだれ込みました。場内はとにかく賑やか、見たこともない作品が並んでいく様子を見ているだけで心がトキメキました。
参加されているモデラーさんも気さくな方が多く話しかけるとすぐに打ち解け話が弾みます。判らない事も素直に聞く事ができて楽しい空間が広がっていました。
地元の友人には模型が趣味だとは話していましたが、女の子のプラモデルを作っているなんてなんだか恥ずかしさもあり話題にもしていませんでした。自分の好きなプラモデルの話で盛り上がれる時間が心地よく、いつもより口数が多くなっていた気がします。
楽しい時間は、あっという間と言います。気がつくといつの間にか終了時間に。会場の熱量で身体が火照りながら帰路につきます。
家に帰った後も興奮が冷める事がなく、こんな楽しいイベントを自分でも開いてみたいと思うようになっていました。
・なごフェスの前身「名古屋FAガールOFF」
早速Twitterで「名古屋でオフ会を開催したら参加したいですか?」と呟いてみると思った以上に反響がありました。まずは会場探し、関西コトオフで大きなスーツケースを持っていた”ソレイユさん(twitter:@Soreiyu8ZOE8)”ともすっかり仲良くなっていたので、相談しながら足を運びやすい会場をピックアップ。募集ページもなるべく分かりやすいレイアウトにしました。
そして関西コトオフから1か月後、なごフェスの前身となるオフ会イベント「名古屋FAガールOFF」を開催する事になりました。
開催日の朝に、私は緊張からか早く目が覚めてしまいした。逸る気持ちを抑え、いち早く会場に向かいました。いつもは人通りの多い大須のアーケードですが、早朝のためか人影はまばらだったことを覚えています。私が会場前でソワソワしている所に友人たちが合流。少し早い時間でしたがスタッフにお願いして中に入れてもらいました。
50人定員の会場に参加人数50人、レイアウトを決めれば、配置は会場がやってくださるので特に心配はしていなかったのですが…。いざ当日、会場に入ると思ったより狭く、不安がよぎりました。展示を待つ人達で会場はごった返していました。
受付を友人に任せて、私は早速テーブルの配置を調整。追加でテーブルも用意してもらいました。テーブルには数多くの作品が並んでいきます。
が、ここで不安は的中。展示スペースが足りず作品が置けない状況に。周りを見渡してもどこの卓もいっぱいです。受付の卓を展示用に回してようやくひと段落。全ての作品を展示する事ができ、思わずため息がこぼれました。
その後は落ち着いた所で開催の挨拶、特に文面も考えていなかったので緊張でかみかみ。ソレイユさんにフォローしてもらう場面もしばしばありました。
落ち着いた所で会場を見回すと、あちらこちらで楽しい話し声や作品を見せ合って和気藹々とした雰囲気に。特に嬉しかったのはわざわざ東京方面から多くのフォロワーさんが足を運んでくれた事です。
初めて開催したイベント「名古屋FAガールOFF」は展示数170作品。美少女プラモデルのオフ会なのにガンプラやドールがあったり、最後は巨大な作品を囲んでのバトルイベント的な事になっていたりと終始楽しい印象でした。
自分がやりたかった事ができた満足感とやればできる、と言う確かな手ごたえを感じました。後日、Twitterで展示作品を紹介、参加者さんから感謝のコメントが多く寄せられた事が励みになりました。
・模型製作会で「モデリング講座」
第1回が終わって数か月、少し趣向を変えた催しをやってみようと、会場を探していました。もともとイベント好きな事もあり、やりたい企画が次々と浮かんでいました。
次のイベントは、展示をしながら製作スペースを設けて、作りながら交流するというものを考えていました。
みんなで製作しながら会話すれば、きっと楽しいに違いない。
「モデリング講座」なんて企画も考えました。実際にどうやって作っているのかを作品を見ながら話す。モデラーさん同士でやっている事を人前で話したら面白そうです。
講座は私とソレイユさんで担当する事にしました。
さて、「モデリング講座」をやると言ったものの…私自身は人前で喋った経験もあまり無く、内容も直ぐには決まりません。
文章を書いては消してを繰り返し、話す練習も家族の前で何度も行ったのを覚えています。
それでも会場では緊張して言葉に詰まる事もしばしばありました。ようやく話し終えてひと段落。「まぁ、最初だからこんなものかな…」
次は、ソレイユさんの番です。
プラ板を使ってスクラッチ造形作品を作る事を得意とするモデラーさんなので、どうやって話しをするのだろうと興味津々でした。
「内容考えてきてないです…」と言われた時にはどうなるかと思いましたが、そこは流石ソレイユさん、話出しはおぼつかない様子でしたが持ち前の話術と明るい口調で会場を盛り上げていきました。
内容を煮詰め考えてきた私とアドリブを交えながら会場を湧かせていったソレイユさん。話し方はお互い全然違っていましたが、振り返ってみると2人の製作への想いを伝える事の出来た良い企画だったと思います。
・「テーマ卓」の誕生秘話
回を重ねていくにつれて参加人数も増えていき、作品のバリエーションも様々。
ある時、参加者さんの1人から同じテーマの作品を1つの卓に集めて展示したいと言う提案がありました。大人気だったソーシャルゲーム「戦艦これくしょん‐艦これ‐」の少女達を模した作品がテーブルに並べたいと言うのです。
開催するだけでも精一杯で作品の展示の方法などは考えていなかったので、嬉しい提案です。同じジャンルの作品が並べられる卓がある、想像しただけでワクワクします。もちろん面白そうなので即採用。テーマの卓のアレンジは提案者である、”のぎさん(twitter:@nogiguchi23)”にお任せしました。
実際やってみると、これが意外とウケが良かった。同じジャンルの作品という事もあって皆さん話しやすい、意見交換もしやすいというコメントも頂きました。その後のイベントにはTwitter でテーマを募集。今では「なごフェス」名物となったテーマ卓はこうして誕生しました。
毎回複数のジャンルで構成しているテーマ卓ですが、特に印象に残っているのが「ハロウィン」をテーマとした卓です。トリックオアトリート、オレンジや黄色をベースとした色とりどりに仮装した女の子達、台座やビネットを使用した豊かな表現をした作品が並びました。ちょうどその時期Twitterでもハロウィンをテーマとしたコンペが開催された事もあって、よく覚えています。
・物販への挑戦
「名古屋FAガールOFF」の参加者も徐々に増えてきた所で、ガレージキットの販売もやってみたいと強く思いようになっていました。というのも、ワンダーフェスティバルやAK-GARDEN(エーケーガーデン)などの物販イベントの多くが東京で行われていたからです。遠方のモデラーの多くは行くだけで一苦労、なかなか欲しいものを購入しにくいという現状がありました。これを少しでも何とかしたい、とそんな気持ちがありました。
そんな事をイベント中に話していると、ワンフェス出店経験もある“マーチンさん (twitter:@marchinmarchin)”から「出店しましょうか。」とお声がけいただきました。これは願ってもないチャンスです。
そこから次のイベントでの出店に向けて準備を進めていきました。
マーチンさんの紹介で出店して頂けるディーラーさんが増えていき、2019年の開催時には無事にディーラー卓を会場に配置する事ができました。
現在では3Dプリンターが主力となり、モデラーとして参加されていた方々も続々とディーラーとして活動し始めています。私個人としても今後は販売をメインとしたイベントに挑戦していきたい、という原動力にもつながっています。(笑)
・名古屋FAガールOFFから「なごフェス」へ
2018年から開催した「名古屋FAガールOFF」も皆さんのおかげで年間3回も開催する事ができました。嬉しい事に回を重ねるごとに知名度も上がり参考者も増えていきました。そのため会場も手狭になってしまったので新たに探していたのですが、これがなかなか見つからない。
まずは名古屋の会場検索で予算に合う場所に片っ端から電話。「模型のイベントをやりたい。」と告げると、「そういったイベントはウチではちょっと。」と断られることもしばしば…。模型のイベントって、絵の展覧会と何が違うのだろうか?と思いながら電話する事、十数件。ようやく条件に合う会場を発見。しかも、過去イベントを開催してきた会場のすぐ近くでアクセスしやすい場所になりました。
さて、会場が決まった所で改めてイベント名称について考えました。というのも「名古屋FAガールOFF」といってもその時はすでに各メーカーから美少女プラモデルが多く展開されており、FAガール(フレームアームズ・ガール)という名称は適切ではないと判断したためです。
色々と考えましたが、名古屋ガールズモデラーズフェスを略して「なごフェス」にする事にしました。「なごフェス」のフェスはフェスティバル、つまりお祭りです。縁日のようなイメージで露店が並んでいてステージではイベントが行われている。「その場所に行けば楽しいものに出会える。」そんな想いを込めてこの名称を付けました。
・みんなで創るオフ会=なごフェス
「なごフェス」では運営メンバーという形態をとっていません。当日の受付や会場準備などは手伝って頂いていますが、基本的には日程、イベント内容、各方面への連絡などは全て1人で行っています。他のイベント主催者の方から「大変ではないですか?」と聞かれる事もありますが、みなさんの協力のおかげもあり楽しく運営できております。
なごフェスのTwitterアカウント(@nagoyagirls_fes)から、ガレージキットディーラーさんの出品商品の情報などをこまめに発信したり、参加者さんへDMで細かな内容をお伝えしたりと募集から開催までの間、飽きさせない工夫をしています。それと同時に各テーマ卓を担当している方々にテーブルのデコレーションや作品の配置などの打ち合わせも行っております。
もともと私は中学、高校、大学と学園祭スタッフを経験していました。そんな中で運営スタッフ同士の意見が纏まらない、参加者側との壁を感じる事もしばしば。スタッフという括りを作ってしまうと何か問題があれば、運営サイドの責任という考え方は私自身があまり好きではありません。あくまでこのイベントは失敗ありきで、何か問題が起きたらその都度、反省して改善していけばいいという私の考え方に基づいてオフ会という形式で行っています。参加者さんの楽しい声が次に繋がるようなイベント作りを目指しています。
・魅せる、撮影会の企画経緯
せっかく作品を作ったのだから、誰かに見てもらいたいもの。SNSにアップするにも、写真を撮る環境が大切です。しかし、撮影環境を整えるにも何から手を出したらよいのか?どうしたら上手く撮れるのか?というのは誰もが行き着く悩みの1つだと思います。
「なごフェス」開催時は私が自宅で使用している撮影ブースとライトのセットを持ち込み喜ばれていたので、撮影会みたいな事をやったら面白そうだと思っていました。
そんな時、Twitterで見かけた躍動感のある作品の写真に驚きました。
「この表現力は只者ではない。」と。すぐに製作者である“零駒さん(twitter:@zerokoma002)”にコメント、撮影について聞いてみると、かなりの技術を持っている方だという事がわかりました。何度か会話をした後、思い切って「なごフェス」に招待しました。
当日、会場にはライトセットと撮影機材を一式持ち込んで頂き、プロさながらの撮影環境になっていました。事前に打ち合わせを行い、公式からアナウンスも行っていたので、当日は撮影ブースの前は長蛇の列ができていました。
写真を撮るだけではなく、ポージングや撮影のアドバイス、その作品が一番魅力的に見える様にコンサルしてもらえるのは嬉しい限りです。私の作品も撮影の合間に撮ってもらいました。誰かに作品を撮って貰うのって新鮮ですね。
・嬉しい誤算
みんなで楽しむイベントと言っても、自分の作品がどのように見られているのかは気になってしまうものです。そこで、なごフェスでは「娘自慢コンペ」を行い様々な視点から作品を選ばせてもらっています。
ある時、景品にするキットが足りずDMで募集した所、参加人数の半分が景品を持ってきてくれる事態に。荷物置き場として確保しておいたスペースにプラモデルの箱が所狭しと積まれていきます。
「この景品どうしよう?」と私が悩んでいるところへソレイユさんが機転を利かせて、ジャンケン大会でその場をうまく収めてくれました。1人ではどうなっていたことか。足りない景品数点で良かったのですが、まさかこんなに多く持ってきてくれるとは思ってもみなかったです。嬉しい反面、びっくりしたエピソードでした。
・これからの「なごフェス」
多くの方々の協力のおかげで「なごフェス」は2018年の初開催から2年間で計5回。2019年11月開催時には参加人数 120人、550作品という過去最大の規模で展開する事ができました。
これまでにテーマ卓を始めとして、コンペ、モデリング講座、ガレージキットの販売、撮影会など様々な企画に挑戦してきました。
嬉しい事に「なごフェス」をキッカケに仲良くなったモデラーの方々で結成された模型サークル「素組会」は“くりえーるさん(twittter:@Quantam415)”を中心にガレージキットディーラー「S.G.M.工房」としても活躍され、製作会には私も参加させて頂いております。
本来であれば2020年はさらに広い会場で開催する予定でしたが、新型コロナウィルスの感染拡大防止の為、やむなく中止する事になりました。世間の情勢を見ながら、2021年には再開する予定です。
またみんなで作品を持ち寄って楽しく、笑い合えるお祭りができるように頑張っていきたいと思います。これからも「なごフェス」を応援よろしくお願いします。