前編では幼少期から高校時代までをご紹介してきましたが、後編では学生時代、就職、夢の出版社に入社へと至るその経緯とミニカーコレクションの変遷をお話していきたいと思います。
実車に夢中だった学生時代
前編でも触れました通り、私は高校3年の夏に文転を決意し、それまでの理系志望から文系志望へと進路を変えました。ただ、決意したタイミングが遅かったことと、文系の履修科目も不足していたため、当然のことながらその道は険しかったので、現役での進学を半ば諦めて浪人受験を覚悟しました。
浪人中の1年間はみっちりと勉強に集中し、プラモデルも自動車研究も一旦おあずけです。。予備校時代に浪人生の分際で免許もクルマも持っている友人がいたのですが、これがまたなんと羨ましかったことか……。。(笑)
それにもめげず、努力の甲斐あってなんとか受験に合格するとすぐさまバイトをはじめ、免許を取るべく自動車学校に通いました。早く免許が欲しかったせいか、この時の自分の集中力はすさまじく、合宿免許でもないのに3ヶ月弱で早々に免許を取得!
兄が乗っていたレビン(AE86)を譲り受け、遂に実車とのお付き合いが始まりました。メンテナンスは可能な限り自分で出来るようになりたかったので、バイトもカラオケ屋からガソリンスタンドへと変更。自分で色々とイジっては夜な夜な山道へと繰り出す日々が続きました。
この頃はどちらかと言うとミニカーやプラモデルよりも実車そのものに関心が強かったので、バイト代のほとんどはクルマのメンテナンスに費やされていました。
ハチロクは前期型レビン3ドアのGTV。トレノも含めた前期後期の各仕様の中で私はシンプルなこの仕様が最も好きです。写真は比較的キレイだった頃の姿ですが、今では悲しいくらいにヤレてきました。ここからが正念場ですな……。
若い頃は時折サーキットにも出かけました。写真は筑波サーキットのコース1000での走行会に参加した際のもの。サーキットは高速道路や峠を走るのとはまた違った感覚で非常に勉強になりました。
当時読み漁っていたハチロク関連の雑誌です。この手の本を片手にあれこれとイジったり壊したり(!?)してたわけですが、ある夜、友人達とバイト先のスタンドのピットでトランスミッションを交換したことなどはいい思い出です。
1/43ミニカーとの出会い
実車がメインだった状況に変化が訪れたのが、ちょうど大学を卒業した頃でしょうか。ある日近所のトイザらスに行った際、京商の1/43ミニカーと初めて出会ったのです。
車種はハコスカのGT-Rで、初めて見たコレクション向けの1/43ミニカーは自分にとってそれはそれは衝撃的で、小さすぎず大きすぎない手頃で集めやすいサイズ感と、塗装も綺麗で車名入りの台座にアクリルカバーを被せたディスプレイ前提のその体裁は実に絶妙の一言。買って帰ってそのまま飾れば大好きなクルマの姿をすぐに鑑賞できる!
これは私にとって非常に画期的なことで、前編でもお伝えした通り、プラモデルだと完成するまでその姿を楽しむことが出来ないため、歯痒い思いを甘んじて受け入れざるを得ませんが、リアルな1/43ミニカーならそのおあずけ的なタイムラグが無く、さらにはサイズ的に展示スペースの負担も少ないとまさに良い事ずくめ。
しかも、1/43スケールというのは世界でも一般的な標準スケールということもあり、車種のバリエーションも豊富で、メーカーの異なるミニカーを並べて飾っても違和感が無いなどメリットが多いのです。
そんな背景から、私は1/43ミニカーの世界にズブズブとハマり込んでいくことになりました。
左上が1/43ミニカーコレクションのきっかけとなった初期の頃の京商製ミニカーです。シブい車種選定に加え、台座に各車のエンブレムを付けるなど趣味性の高さに惚れました。
その隣は同時期に登場したエブロの3台とミニチャンプスのミウラです。このミウラの出来栄えの良さにヤラれ、以降はメーカーを問わず1/43の世界にどっぷりとハマってゆきました。
出版業界への転職と模型専門誌『モデル・カーズ』
私の世代は就職氷河期の最初の世代でして、就職活動はかなり苦戦しました。特に出版社を含むマスコミ関係は募集人数も少なく壊滅的な有様……。。
そこでここは何か手に職を付けようと思い、大学卒業後に1年制のコンピュータグラフィックの学校に通いました。その際に初めてコンピュータやインターネットを学んだのですが、新たなメディアであるWEBの世界に可能性を感じ、卒業後はWEBサイトなどの制作会社に入社しました。
しかしながら、WEBコンテンツはあくまでもクライアントの指示通りに制作するため、肝心な中身を作るにはやはりコンテンツホルダーである出版社が理想的だなという想いが徐々に膨らんでいきました。この時期に満たされない思いを癒してくれたのは恵比寿にあったホビーショップ「ミスタークラフト」での爆買いでした(笑)
爆買いの日々に買ったミニカーの一部(笑) 子供の頃に憧れた劇中車は発売されると必ず入手していました。西部警察やナイトライダーものは今ではかなり充実していますが、トランザム7000の劇中車はなかなか無く、写真のトランザムは劇中車ではないものの仕様が近いオートワールド製の1台です。
そんな日々に転機が訪れたのは自動車雑誌『J'sティーポ』にあった社員募集の広告でした。同誌を出版するネコ・パブリッシングは実は私の自動車研究に欠かせない書物を沢山提供してくれていた会社だったのですぐさま応募し、情熱とやる気だけで何とか面接を乗り切り、幸運なことに採用していただけました。
編集の経験が無かった私を拾っていただけたのは、今でも感謝しかありません。
入社当初はWEB関連をメイン業務としてましたが、元々私が編集希望であったのに加えミニカー漬けだったこともあり、模型専門誌『モデル・カーズ』の編集業務にも携わらせていただき、その縁で独立した現在も引き続き同誌のお仕事をさせていただいています。
写真は編集業務に参加し始めた頃のモデル・カーズです。ネコ・パブリッシングでは、自動車やライフスタイル雑誌のほかに、自動車ニュースサイトの記事作成など色々な経験をさせていただきました。この頃から仕事と趣味が徐々に融合し始めてゆきました。
レジンモデルの隆盛とミニカー百花繚乱の時代
そんなこんなで紆余曲折しながらもミニカーの素晴らしさやコレクションの楽しさ、そしてミニカーを通して自動車文化を広く伝えるという仕事に幸運にも就くことができたのですが、今思えば、私がこの仕事に携わってからのミニカー市場は非常にダイナミックな変化と進化を遂げた時期だったと実感しています。
1/43ミニカーで言えば従来主流であったダイキャストモデル(いわゆる金属製)からレジンモデル(いわゆる樹脂製)へと素材が移行したり、ミニカーをリリースするメーカーやブランドが爆発的に増えたことが特に印象的です。
これによって、人気のある定番車種だけでなく、知る人ぞ知るマニアックな車種まで、実に幅広い車種を手に入れることが出来るようになったことはコレクター冥利に尽きるというだけにとどまらず、自動車文化を盛り上げる上でも非常に意義深いことだと感じています。
また、最近ではより大きな1/18スケールの盛り上がりも目覚しく、車種の面ではチューニングカーのモデル化もトレンドとなっており、ミニカー市場はさらなる広がりを見せています。“若者の自動車離れ”が叫ばれて久しい昨今ですが、ミニカーをきっかけに少しでもクルマに興味を持ってくれたらこれほど嬉しいことは無いです。
こちらのタスカンは初期のスパーク製で発売当時は塗装の美しさとシャープな仕上がりに驚きました。それまで高価だったレジンモデルが比較的手が届きやすい価格で出てきたので、その衝撃はかなりのものでした。このレジン革命によって、マイナーな車種もその後どんどんモデル化され現在に至っています。
私のミニカーコレクションの現在と今後
さて、ついつい熱くなってしまい長々と書いてしまいましたが、現在私はライターの仕事をしながら、トミカや1/43ミニカーを中心にマイペースにコレクションを楽しんでいます。
以前、私にとってミニカーをコレクションするということはいったい何なのか? ということをわりと真剣に考えた事があるのですが、その時に辿り着いたひとつの答えが「クルマの標本集め」という感覚でした。ある意味、昆虫採集とも似た感じです。
実車を集めることは物理的にも経済的にも不可能ですが、ミニカーでならある程度は可能です。ゲットしたミニカーを好きなように飾るということは3次元の自動車図鑑、あるいは小さな自動車博物館を眺める感覚にも似ているんですよね。
小学3年生の頃から30年以上にわたってコツコツと集めてきたミニカーの正確な台数は正直よく分からないのですが、恐らく4桁に届くのではと我ながら呆れてしまいます。。(笑)
でも、せっかく集めたわけだし、ただ単に部屋に飾って眺めるだけではもったいないので、今後は出来たらWEB上でミニカー版の自動車博物館みたいなものを公開して、自分のコレクションを少しずつ紹介してゆけたらなと考えております。
本当に微力ではありますが、少しでも大好きな自動車への恩返しがしたいのと、そこまでやって初めて自分のコレクションが完成するような気がしているので、是非今後はこの構想を近いうちにスタートさせたいと考えています!
左は私の好きなル・マン出場車たち。長年、ル・マン優勝車のコンプリートを目指してきましたが、最近ようやくそれが完成したので、今後は是非ともWEB上で年代順に紹介していきたいと思っています。
右は私が最近惚れ込んでいるイグニッションモデルの車輌です。値段が張るためおいそれとは買えませんが、出来が素晴らしいので満足感は高いです。それゆえ、最近では台数よりも満足度の高い1台を優先したコレクションに変化しつつあります。