「激走!5000キロ」1976年制作のアメリカ合衆国のカーアクション映画。チャック・ベイル監督
コラボ企画第 10弾!
カートイズミーティング & カートイワークスのコラボ企画は第 10弾を迎えました。今回のテーマは「激走!5000キロ」の追憶です。この企画は第八弾辺りから既に筆者独自の世界を突き進んでいますが、今回も顧客満足度など気にもかけない筆者の嗜好性全開でお届けします。
「激走!5000キロ」
「激走!5000キロ」は 1976年公開のアメリカ映画で、本国でのタイトルは「ザ ガムボール ラリー」( THE GUMBALL RALLY )です。キャノンボールなどに代表される大陸横断型カーアクション映画です。監督が誰とか興行収入がどうのといったデータはウィキペディアさんにおまかせして、本企画ではこの映画に登場する車両を例によって3インチミニカーを主軸に紹介します。
主役はコブラ
大陸横断レースが題材だけにあらゆる車が出演しますが、主役を張って銀幕を走るのは主人公マイク・ バートン駆る青い ACコブラ427です。青一色のコブラが見つからないのでレギュラー ホットウィールのコブラに出演してもらいました。
ACコブラは京商や 100%ホットウィールから、リアルな 1/64 ミニカーがリリースされています。しかし車体が小さなコブラは真面目に 1/64にすると迫力が伝わりません。繊細な 100%ホットウィールや京商より、レギュラーホットウィールの派手なフェンダーと太いタイヤがコブラの無骨な魅力を伝える気がします。
ライバルはフェラーリ デイトナ
主役のコブラと終始トップ争いを演じるのは陽気なイタリア人フランコが駆る赤いフェラーリ デイトナ スパイダーです。フェラーリ 365 GTS4 (デイトナ) のミニカーは多数有りますが、スパイダーは希少です。今回はホットウィールのデイトナ スパイダーに出場願いました。
この企画のためにブリバリ (ブリスターパックをバリっと破いてミニカーを出す勇気ある行動のこと。ホットウィール用語) してまでホットウィールを選んだのは京商デイトナのノーズラインが伸びやかさを欠くためです。ホットウィールのフェラーリコレクションは発売当事いつまでもトイザラスに陳列され続けていましたが、マテルがフェラーリ版権を手放してからはプレミアが付いています。
双美人のポルシェ
マイペースで走っていたのは美人二人組みのポルシェ タルガです。
特別な高性能版でもない普通のナローポルシェはSIKUのミニカーです。
劇中でこの御婦人方は男性と絡んだことを後悔したのか泣くシーンが有ります。まだ女性が清楚だった古き良き時代の映画なのですね。今では遊ばれて泣くのは男性なのだそうです。何やら「パンフのポルシェにはスポイラーが映っているではないか」と声が聞こえます。
ホットウィールのポルシェ タルガ
こちらはホットウィールのポルシェ タルガです。ターボルックのタルガはコーギー金型です。
出場車両のほとんどがオープンモデルでありポルシェもタルガが選ばれたのだと思います。
動かぬこと山の如し。ジャガー。
スタート地点でエンジンが始動できず、ついに最後まで走らなかったのはジャガー E タイプです。御自慢の 12気筒エンジンも動かなければ宝の持ち腐れです。英国車は故障が多いと暗に揶揄しているのでしょうか。
星の数ほどあるジャガー E タイプのミニカーから選ばれたのはホットウィールです。メールオーダー限定 30ドルというホットウィールでも最高級階層を構築していたレジェンドシリーズの一員です。
ロールスロイス マッチボックス
もう一台の英国車ロールスロイスは貧乏青年が陸送名目で走っていました。ミニカーは同じくマッチボックスです。題材となった車の原産国で作られたミニカーが良いと思われる方は多いと思います。
マッチボックスの英国車は精密では有りませんが、良い味を醸していると思います。もう一台は香港のプレイアートです。鼻先のオーナメント「スプリット・オブ・ エクスタシー」は欠品です。プレイアートも香港の雑踏のように全貌が掴めない謎の B級ミニカーブランドです。
ジャンプして折れたコルベット
白い C3 コルベットはグラマラスなボディを魅せつける間もなくレース序盤でジャンプして、御自慢のコークボトルラインのウエスト部分で前後に分解してしまいました。
ミニカーは JADAの C3 コルベットです。青がコンバーチブルで白はクーペです。
「映画出演車両は白いコンバーチブルだぞ」と怒られそうです。
ビテスの C3 コルベット コンバーチブル
1/43 スケールには踏み込まない予定でしたが 3インチの白いコンバーチブルが無いのでビテスの白い C3 コルベット コンバーチブルを紹介します。歴代でもっともグラマラスな C3を的確に模型化しています。
C3のグラマラスなボディは 56センチのウエストに Fカップバストを揺らせる元彼女のナイスボディを思い出させますが、このドメインに脱線すると止まらなくなるので、ゲンロク風のフィギィアを添えるだけにしておきましょう。
片輪走行!カマロ
片輪走行と言えばマシンハヤブサの裏技ですが、劇中では黄色いカマロが片輪で走った末、横転しました。
この映画における御当地のアメ車はこうしたアクションで笑いをとったあと、早々に消えていきました。
カマロのミニカーは多く有りますがここはアーテルのサメカマに出場して頂きました。前後フードが開閉する三世代目カマロです。天から「映画のカマロは淡い黄色だったぞ」と言う声が聞こえます。
ヤトミングのカマロ
年式が違いますがヤトミングの黄色いカマロです。海ちゃんに手伝って頂いて片輪走行させました。
ヤトミングは偉大な B級ミニカーブランドですが、ボディラインの的確さにおいて今もってこのサメカマを超える 3インチミニカーを知りません。
2種類のベンツ
ベンツは 2種類登場しました。老紳士がお酒を酌み交わしながら走ったのは 300 SLです。ロードスターのミニカーが無いので銀色のトミカに登場してもらいました。
もう一台は軟派を終えたフランコをデイトナに送り届けた、お嬢様のベンツ 350 SLです。
黒いミニカーはジルメックスの メルセデス ベンツ 350 SLです。ジルメックスは未だに全貌が掴めない謎のブランドです。貧乏人の妬みなのかベンツには深い思い入れが無いのでこんな気が抜けた紹介で次に進みます。
カワサキ KH400
序盤で消えることなく完走したのはカワサキのバイク KH400です。写真の KH400はアオシマの 1/24ダイキャスト模型で、漫画「特攻の拓」出演車両です。
筆者が初めて KH400を見た際は、4本マフラーが 1本落ちて3本マフラーで走っているのかと思いました。それほど凄い騒音だったからです。
劇中の KH400は看板に突っ込んだりして各所で笑いをとった後、ゴール地点では止まりきれずに海に落ちて最後まで笑いを提供してくれました。
シボレーバン
燃料を満載して無給油を狙って走ったシボレーバンは花火工場に突入して爆発炎上しました。ミニカーはレーシングチャンピオンです。テールゲートが観音開きで開閉します。
米国人には原風景のようなシボレーバンですが、筆者は細かい違いがわかりませんので年式や細部の違いは言いっこなしでお願いします。
世界の名車が勢ぞろい!
当時の映画パンフレットを見ると、かなりの車好きが企画した車種選択だったことが窺い知れます。他にも警察車両に化けた ダッジ ポララなど多数の車両が出演しましたが、今回は割愛しましょう。このところ当コラムのボリュームが膨らみすぎたと反省した筆者は、要点を的確にしてシンプルにまとめることにしたからです。
勝利の行方は?
さて終盤はデイトナとコブラが優勝を争います。この映画の見所と言われるフェラーリ製 12気筒が奏でる気が遠くなるように美しい音色と、アメリカン V8エンジンの爆音がデットヒートを繰り広げます。暴力的な加速はコブラが、高速の伸びはデイトナが勝りどちらが勝つかわからないといった極みで、勝敗は意外なところで決します。
ゴール直前に駆け寄ってきた女性ファンの色仕掛けにあっさり乗ったデイトナのフランコは目前の勝利を逃します。勝利の女神はコブラに微笑みました。
ゴール直前の誘惑
それにしても 5000キロも走破し、ゴールまであと100メートルのところで色仕掛けにはまり勝利を逃したフランコを筆者は笑えません。高校生の時にこの映画を初めて見た筆者はフランコを「バカな奴だ」と思いました。それから数十年、トイザラスまであと 100メートルのところで、お誘いのメールが着信した筆者は誘惑に負けてトイザラスを後回しにしたことが有ります。その日に買えなかったホットウィールは今もって未入手です。筆者は高校生だった自身にも劣る「バカな奴」です。しかしイタリア人の心がわかるようになった今のほうがはるかに幸せです。
「ザ ガムボール ラリー」
キャノンボールを初めとする大陸横断型カーアクション映画は、レースよりも乱闘や裏工作・陰謀が主軸に描かれ、純然たるカーアクションが脇に押しやられている作品ばかりですが、この激走!5000キロは純粋にレースや車が好きといった原動力で作られたような気がします。優勝者が手に出来るのはガムボールが入ったベンダーです。ゲームセンターなどに置かれているコインでガムが買える装置で金銭的な価値は有りません。
それが原題の「ザ ガムボール ラリー」の所以です。巨万の優勝賞金のためでなく純粋に車が好きな人々のレースだからこそ、車好きに受ける映画なのでしょう。その後似たような映画は星の数ほど作られましたが、いつまでも激走!5000キロを忘れられない理由は純粋な車好きが車好きのために作った映画だからだと思うのです。
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