カートイワークス & カートイズミーティングのコラボ企画 第八弾です。今回のテーマは 「あなたの知らない世界 ガルーブのマイクロマシン」です。第七弾で有り触れた記事を書いて反省した筆者は、このコラムの趣旨であるディープな世界に回帰することにしました。そして選ばれたのが誰も知らない (と思われる) ガルーブのマイクロマシンなのです。
マイクロマシンとは?
ガルーブ社は米国のトイメーカーでした。マイクロマシンという掌どころか指先に乗るような小さなオモチャのシリーズをリリースしていました。もちろん大きなトイも売っていましたが、普通なモノに満足出来ない変な子供だった筆者の記憶に残るのはマイクロマシンと呼ばれる小さなトイたちでした。
マイクロマシンの小さな車たち
マイクロマシンは飛行機や艦船、そしてキャラクターメカまであらゆる題材を小さな模型にしていましたが、カートイワークス&カートイズミーティングのコラボ記事ですから車に焦点を合わせましょう。写真はカウンタックのミニカーです。左が標準スケールの 1/43、中央がトミカサイズの 1/64、そして右がマイクロマシンです。マイクロマシンは全長 3センチ程度のややディフォルメされた樹脂製のミニカーで写真手前に置かれた五百円玉に乗る極小サイズです。
出逢い。野村トーイのマイクロマシン
1980年代終盤、タカラがマイクロマシンを国内販売していました。1/43のミニカーならば一台しか収まらない程度の大きさのケースに、数台のプラスティック製ミニカーが固定されて売られていました。当事独身だった筆者は、恋人とデート中にバラエティショップで戯れるバカップル状態でこのマイクロマシンに出会いました。小さなミニカーは綺麗に彩色されていますが、独特のディフォルメがチープ感を演出しています。無名の B級トイだと思って過ぎ去ろうとしましたが、そのマニアックな車種選択に筆者は立ち止まりました。
マニアックな車種構成マイクロマシン
写真は野村トーイ輸入時代のカタログです。今でこそこうしたエンスーな車たちはヴィンテージ扱いされて価値を評価されていますが、バブル真っ盛りの 1980年代終盤は、新しいものや高機能なものが持てはやされ、古き良き時代に想いを馳せる文化は希薄でした。しかしお子様向けトイにもかかわらずマイクロマシンのエンスーな車種構成に驚いた筆者は食い入るように魅入ります。「早く夕ご飯行こうよぉ!」しびれを切らせた彼女が急かします。筆者は数箱のマイクロマシンを掴むとレジに向かい連れ帰りました。
空前絶後の極小可動
筆者がマイクロマシンに魅入った理由は車種選択だけではありません。写真のカウンタックやベンツ SLは全長 3センチ程度と極小ながら、前後フードとドアが開閉する、フル開閉モデルなのです。本コラム第六弾「ミニカーは可動するから面白い」<前編> <後編>をご覧になられた皆様なら、筆者が小さくて可動するミニカーに目がないのは既知だと思います。3インチどころか 3センチなのにボンネットやドアが開閉するマイクロマシンは、筆者にとって猫にマタタビだったのです。
極小可動のフェラーリ
極小ながらも稼働するフェラーリです。前後カウルとドアが開くフェラーリのモデルカーは多分これが世界最小でしょう。テスタロッサと F40はともかくモンディアルという車種選択が勘違いなのか、意図して狙ったのか知りたいものです。これが子供の玩具としてマス・プロダクションされていたのです。そんな見当違いの商品を開発するマイクロマシンに筆者はガループ社の宇宙のような奥深さを見たのです。
ミニラマ時代の車たち
野村トーイとどちらが先かは不明ですが、タカラが 1980年代から 90年代にかけて販売していたミニラマ時代のマイクロマシンのパッケージ裏です。こちらもなかなかにエンスーな車やスーパーカーが揃います。この時代はミニラマと呼ばれるマップ仕立てのミニラマトラベルシティを作って子供たちを遊ばせようと言う戦略だったらしいです。これで遊んでお子様時代を過ごした方がいらっしゃいましたら感想を聞いてみたいものです。
香港で再会したマイクロマシン
こんなマニアックなマイクロマシンが売れ行き好調なわけも無く、マイクロマシンを店頭で見かける機会は無くなりました。それから永い時間が流れ、筆者が次にマイクロマシンに出くわしたのは 1990年代中盤、香港のドラッグストアでした。ぐずる子供を黙らせるために、コンビニに申し訳程度のミニカーが置かれるように、そこにも 五台パックのマイクロマシンが捏ねるように置かれていました。香港の雑踏で再び出くわしたマイクロマシンは車種選択のマニアックさに磨きをかけていました。写真はそのパッケージの裏側です。それではそのマニアックなマイクロマシンたちを紹介しましょう。
マイクロマシンの跳ね馬たち
マイクロマシンのフェラーリです。250テスタロッサや 250 GTOといったヴィンテージモデルや、ディノ 246 GTSなどのコアなモデルが揃います。365 GTB4デイトナをクーペとコンバーチブルに作り分けるところが、エンスーな人々の願いを理解してくれているような気がします。
マイクロマシンのスーパーカー
フェラーリ以外にもランボルギーニ始めスーパーカーがラインナップされていました。カウンタックは可動する黒と可動しない赤で金型が違います。ほかにもディアブロやジャガーXJ220、マクラーレンF1、ブガッティEB110、ヴェクターなど90年代に 300キロの壁を越えたスーパーカーたちが居並びます。
ポルシェ
極小のポルシェ軍団です。フラットノーズの 935ターボや、グループAを制した 962などが揃います。356もクーペとコンバーチブルを作り分けています。
エンスーなレーシングカーたち
コブラ427に、コブラデイトナクーペ、ジャガーDタイプ、マクラーレンM8にフォードGT40と今では博物館行きのレーシングカーたちです。これらが 1990年代にお子様向けにリリースされていました。聖書には「魚を欲しがる子供に蛇を与える親がいるだろうか」という教えがありますが、お子様にコブラ与えても喜ばなかったと思います。
アメリカンな車たち
ガルーブにとっては御当地のアメ車は数多くリリースされていました。マッスルカーに 1930年代のホッドロッドなどアメリカンモータリーゼーションの縮図が見られます。コルベットも数多く有りますが、キャラウェイが御当地らしいアイテムです。
バイクとトラック
四輪だけでなくオートバイやトラック、バス、キャンパーも有りました。バイクは乗っているフィギィアがバイクの性格を表していて秀逸です。こうしたアイテムがマイクロマシンの世界を広げていました。
マイクロマシンの広がる世界
ブリスターに収まったマイクロマシンはボートやウインドサーフィンと車がセットされたものです。パッケージ裏には航空機やミリタリーの世界に広がりを見せる豊富なラインナップが紹介されています。
豪華な 007セット
不朽の名作映画 007シリーズも魅力的なパッケージでリリースされました。定番のアストンマーチンやロータスエスプリが嬉しいです。日本人としてはトヨタ 2000GTを入れて欲しかったですね。
どちらがオリジナル?
右のパッケージはマイクロマシンの空港セットです。左のパッケージは大きさなどのフォーマットがマイクロマシンそっくりですが天下のホットウィールの極小サイズミニカーです。その名もマイクロ・プラネットシリーズです。ペティのポンテアック グランプリが入っていますが、雰囲気がマイクロマシンそっくりです。どちらが先かはわかりませんが、お互い気になる存在だったのですね。
スケルトンモデル
筆者の性格なのか、変なモデルを紹介しないと落ち着きません。写真奥の透明なテスタロッサと F40は前述した極小可動モデルの透明版です。透明で可動するなんて、変態モデル好きにはたまらない演出です。1940年式フォードはランブルシート(トランクに設けられたリアシート)が起き上がります。ボディがフリップするファニーカーは車種がプリムスアロー(日本の三菱セレステ)なところが感激です。
マイクロマシンのZ
日本生まれのアメリカ育ち、フェアレディZも多数リリースされました。S30型 240Zは 3バリエーション、Z31はコンバーチブルです。Z31と Z33はそれぞれ違う無名ブランドのマイクロマシンもどきです。パチモンが発売されると言うことは、マイクロマシンがメジャーブランドと目されていたということですね。
マイクロマシンの日本車
スポコンブームを経た今でこそ、日本車は海外で認められていますがそれより以前にマイクロマシンでも日本車は数多く発売されていました。三菱GTO (ダッジ スティルス?)や本田 CRXデルソルなどレアな国産車がモデル化されています。MR2は AW10と SW20 の二世代揃い踏みです。
ミリタリーとキャラクターの世界
マイクロマシンは車にとどまらずミリタリーやキャラクターモデルを数多くリリースしていました。写真はミリタリーシリーズとスターウォーズシリーズのカタログ抜粋です。例えばスターウォーズは有名なXウイングから、何だこれは?の建造中デススターまで、エピソード4から6のメカは出し尽くしたと言えるでしょう。機会が有ればこれらミリタリーやキャラクターモデルを紹介したいのですが、今回は車に絞ってこの辺で終わろうと思います。最後にガルーブ社の終焉に触れましょう。
ファントム・メナス「忍び寄る脅威」
2000年、待望のスターウォーズ エピソード 1「ファントム・メナス」が公開されました。エピソード 4から 6までの膨大なラインアップをリリースしていたガループ社は満を辞して、エピソード1のマイクロマシンシリーズを大挙発売しました。しかし映画は思ったほど振るわず、大量の在庫を抱えたガループ社は倒産しました。ファントム・メナスはマイクロマシンにとってまさに「忍び寄る脅威」だったのです。写真はエピソード 1を含むスターウォーズのマイクロマシンたちです。
エピソード7で復活
2016年エピソード 7が公開されました。この際にマイクロマシンのロゴマークが復活しました。ハズブロ社がマイクロマシンシリーズを復活させたのです。ガルーブ時代は全面が塗装されていたマイクロマシンですが、復活したマイクロマシンは基本的に成型色で所々に色差しされているだけでチープ味が増しました。写真の旧 Xウイングは全面塗装されていますが新しいエピソード 7の Xウイングは成型色に色差しだけです。往年のブランド復活を嬉しく思う気持ちと、やはりマイクロマシンはガルーブに作って欲しいという寂しい気持ちが交錯した複雑な復活劇でした。
マイクロマシン。その小さくて大きな世界。
小さなマイクロマシンたちが織成す広大な世界はいかがでしたか。マイクロマシンには、小さいけれども子供たちを喜ばせたいという作り手の思いが込められているような気がします。それはグリコに代表される駄菓子のオマケに通じるように思えます。テレビもビデオもゲーム機もない、そんな時代の子供たちは、駄菓子を食べ終わっても残るオマケがまさに磨り減るまで遊び尽くしました。子供たちは敏感です。適当に手を抜いて作った玩具なのか、自分たちを少しでも喜ばせようと作られたものかを敏感に見抜くのです。マイクロマシンに魅入る大人たちは、子供の心のままで大人になれない、そんな人達なのだと思うのです。
カートイズミーティング × カートイワークス コラボ企画
第七弾 市販車の姿をした怪物 シルエットフォーミュラ <前編>
第七弾 市販車の姿をした怪物 シルエットフォーミュラ <後編>
カートイワークスのミニカー買取はこちらです。リストアップされていないミニカーも絶賛買取強化中です。お気軽にお問い合わせください。