カートイズミーティング × カートイワークス コラボ企画 第五弾
スロットにハマり抜け出せない
カートイズミーティング & カートイワークスのコラボ企画 第五弾です。今回のテーマは
「スロットにハマり抜け出せない」です。スロットと言ってもギャンブルのパチンコ、スロットにハマって破産した話しでは有りません。レールに掘られた溝、スロットに導かれて走るスロットレーシングカーのことです。そんな筆者がハマッている世界を垣間見てみましょう。
お題は HOスケールのスロットレーシング
今を去る 1960年代に空前のスロットレーシングブームが起こりました。全国津々浦々にスロットレーシングサーキットが乱立し老いも若きもスロットレーシングに興じました。この時の主流は 1/24スケールでした。タミヤやコグレと言った当時のスロットカーは現在はハイプレミアが付いています。しかし今回の話題は筆者がハマったトミカサイズのHOスロットカーです。
HOスロット 初体験
空前のスロットレーシングブームが去ってほぼ 10年、トミカサイズの HOスロットレーシングがプチブームになりました。タカラやトミーが TYCOや AFXの HOスロットサーキットを国内販売し、業務用サーキットを常設する店舗が各地に見られました。筆者はそんな 1970年代の終盤に HOスロットカーにハマりました。最初は百貨店に無料開放された AFXマグナカーを友人と面白半分で走らせていましたが、ダイキャストミニカーを凌駕するリアルな造型のポルシェ917がヘッドライトを光らせてバンクを走り抜けた時、高校生だった筆者はHOスロットカーの世界にハマりました。駄玩具的なビッグレーシングしか知らない少年にとって、マグナカーのスピードとリアルな造詣は別次元の衝撃だったのです。
マイファースト HOスロット
高校生の筆者がバイトして貯めたお金で最初に買った AFXマグナカーサーキット セットに付属していたのが、写真の C3コルベットと AMXジャベリン トランザムです。筆者はジャベリン トランザムと書かれた解説書を見て「トランザムってこんな格好だっけ」と思いました。
今思えばそれはファイアーバード トランザムではなく AMXジャベリンのトランザムでした。しかしグーグルさんやウィキペディアさんに尋ねることも出来ない当事はアメリカ車は遠い彼方の世界であり、高校生の筆者がそんなことを知る手段すら無かったのです。
プラモデルは作って遊び倒して破壊するという普通の少年だった筆者は、何の迷いも無くこの二台の内側を半田コテでえぐり取って軽量化しました。この二台は筆者の貧乏屋敷に設置されたマグナカーサーキットを何万周も周回した筆者思い出のファーストマグナカーです。
スーパーマグナカーの衝撃
AFXのマグナカーには日本語訳されたガイドブックが発行されていました。海外ではスロットカーによる 24時間耐久レースが行われているなどと書かれた記事を読み、スロットカーの世界への思いが広がりました。
ガイドブックには通常のマグナカー (当時¥950) より格上のスーパーマグナカー (当時¥1,500) のラインナップが紹介されていました。その中に当事の筆者が最も好きな車 フェラーリ 365 GTB4 デイトナが有りました。筆者は一ヶ月分の小遣いの全額を投入してスーパーマグナカーのフェラーリデイトナを手に入れました。
スーパーマグナカーはモーターの固定子に相当する永久磁石をシャシ下面ギリギリに配置して、その磁石が鉄レールに吸い寄せられる磁力で、コーナーリングにおける横Gを相殺して異次元のコーナーリングスピードを実現していました。
筆者は大好きなフェラーリデイトナの異次元の走りに魅了されますますスロットカーの魅力にハマっていきました。写真はその AFXマグナカーのフェラーリデイトナ (黄色) とそれを赤くリペイントしたものです。
なぜ HO?
写真は昔の AFXスロットカーボディを復刻したジョニーライトニングのミニカー サンダージェットシリーズですが、写真手前の小ぶりなマーキュリーやギャラクシーだと概ね 1/87に相当します。HOとは鉄道模型のスケール表記です。HOゲージ鉄道模型のレール巾 16.5ミリから逆算するスケール表記は、概ね 1/87程度です。
前述の車両たちはいずれもトミカサイズで、スケールはどう見ても 1/60程度なのですが、HOスロット黎明期の比較的大きめなアメリカ車が概ねこのスケールだったこともあり、現代では概ねトミカサイズの車両が走るスロットレーシングを総括してHOスロットカーと呼ぶようになっています。
スロットカーワールドのBRE
写真はマグナカーのダットサン 240Zとダットサン 510です。アメリカ車ばかりのラインナップにこの 二台が紛れていた理由を当事の執筆者は知り得ませんでした。この二台が米トランザムシリーズで残した成績を考えれば当然のラインアップなのですが、当事は海外のレースなど遠い異国の出来事だったのです。
筆者はこの二台のカッコ良さにシビレました。初代 Zや 510ブルーバードはトミカからもラインナップしていましたが、それらは街中で見かける乗用車のミニカーに過ぎませんでした。それに比べてマグナカーの 240Zと 510のレーシーな出で立ちは圧倒的な雰囲気を醸していました。どんな精密な模型が発売されようとも、BREの 240Zと 510はモノグラムが良いと思ってしまうように、この 2台のカッコよさを最もわかっているのは米国人なのですね。
TYCOの 280ZX
AFXマグナカーと国内シェアを二分していたのが TYCOでした。写真は TYCOの 280ZXです。国内では大きく重いと評され、レースシーンで見かけなかった S130型280Zですが、TYCOの手に掛かると見違えるようにクールです。マグナカーに並とスーパーが有るように、TYCOにも廉価版の HP7と高速版のマグナムがありました。写真の 280ZXはマグナムです。
TYCOと AFXはスロットの深さや電極の巾などがほぼ同じで、どちらの車も他社のレールを走れるようになっていました。貧乏少年には有り難い偶然?の互換性です。
歴代Zが揃うHOスロット
初代 240Z、S130型280Zを紹介したところで、さらに Z31型300ZX、Z32型の紹介です。Z31はマグナカー、Z32はマグナカーと TYCO両方からの揃い踏みです。S130、Z31、Z32ともに国内レースではあまり活躍しませんでしたが、海外では IMSAなどで大活躍しており、その雄姿をスロットカーで再現できます。Zは日本生まれでアメリカ育ちと言われる訳が良くわかります。
アメリカンハイウェイのトレイラートラック
まっとうなモノを幾つか紹介してきましたが、そろそろキワモノに脱線したくなってきました。写真のアメリカンハイウェイセットに付属するトレイラーはマグナカーのトレイラートラックです。
ロングのコンテナを揺らしながら走る様は迫力です。これを追うパトカーはパトランプが点滅するアクション付きです。こうした異型の製品がHOスロットの世界の裾野を広げています。
空前絶後レールごとジャンプ ビクトリーマウンテン
写真のセット ビクトリーマウンテンはスロットカーによるジャンプを再現しようとしたセットです。スロットカーがジャンプしたらスロットから外れて元に戻れないのでは?という疑問が湧きます。なんとこのセットではマグナカーがジャンプ位置まで達すると、レールが切り離されてジャンプ先までレールごと運ばれます。マグナカーを乗せたレールは円弧状に移動し、着地地点のレールに接続します。マグナカーはまるでジャンプを終えたかのように着地地点のレールを走り出します。二次元の走りをするスロットカーに三次元の動きを与えようとした企画に拍手です。
このセットにはマグナカーには珍しい 2ボックスカーのゴルフ ラリー仕様とプジョー 205T16が付属していました。
場外乱闘? アオシマのスロットカー
1980年代のHOスロットカー プチブームは AFXや TYCO以外にも参入者を呼びました。写真のセットはアオシマの HOスロットレースセットです。レースカーはフォーミュラカーが 二台付属しますが、なぜか 240Zと ポルシェの無塗装ボディが付属します。
このオマケが無性に嬉しいのです。アオシマには筆者のニーズをわかってくれる企画担当者が居るとしか思えないときがあります。不思議なメーカーです。
変わり身早い? ビックレーシングのHOスロット
写真のセットはビックレーシングです。ビックレーシングと言えば 1/40程度の駄玩具的スロットカーだと思いきや、このビックレーシングは HOスロットカーです。
コースセット車両 2台付きで 三千円程度と安価なスロットカーセットを提供し、お子様向けレースセットのシェアを独占していたビックレーシングでしたが、HOスロットのプチブームを見逃すわけにはいかず参入したのでしょうか。謎はつきません。
派手なメッキボディの C3コルベットとポルシェ 906が付属します。HOスロットに進出しても何だかチープ感が漂っていて、愛さずにはいられないビックレーシングの HOスロットカーです。
スロットが無いスロットカー
写真のセットは TCRの HOスロットセットです。このセットのレールにはスロットカー特有のスロットが有りません。なんと TCRは掟破りのレーンチェンジが出来るのです。コントローラにはアクセルに加えてステアリングが付いています。このステアリングを操作して左右のレーンを変えながら走ることが出来るのです。
ステアリングを操作するとモーターに加わる電圧が反転します。TCR車両は特殊なギアによりモーター正転でも逆転でも前進する構造です。さらにモーター正転と逆転により僅かに前輪の向きを変える機構が付いており、これによりレーンを左右に変えながら走行出来るのです。ここまで来ると最早スロットカーと呼ぶべきか悩みます。HOスロットの世界におけるキワモノ中のキワモノなのでしょう。
車両は TYCOと同じボディの Z32です。
スロットカー群雄割拠
他にもスーパーカーブーム時代のバンダイのグランプリレーシングや、ジョニーライトニングなど名立たるブランドが多数 HOスロットの魅力を具現化しようとしましたが、万民の心を掴むことはありませんでした。
HOスロットは強力な磁石によるコーナーリングスピードの高速化により、常にアクセル全開のフルスロットルレースと化してしまい、面白味が減って衰退してしまいました。高性能スロットカーによる全開レースより、性能が低い 並のマグナカーや HP7でテールを振りながら走るほうが楽しいのですが、そうした面白味がわかるかたは今や高齢化しまさに絶滅寸前のジャンルです。
青春を共に過ごした仲間
フィギィアの世界では映像作品キャラよりも、格闘ゲームキャラにしばしば高値が付きます。受動的に見るだけの映像作品と違い、格闘ゲームキャラは自分と同一化して戦った強い思い入れがあるからです。同様に明らかに出来が良いミニカーよりボロボロのスロットカーに高値が付くことがあります。受動的に眺めるだけのミニカーよりも、共にレースを戦ったスロットカーには強い思い入れが有るからでしょう。そうした思い入れを大切にしてください。ボロボロのスロットカーはあなたと青春の日々を共に過ごしたかけがえの無い仲間だからです。
カートイズミーティング × カートイワークス コラボ企画
第五弾 スロットにハマり抜け出せない