フジミのエンスージアストシリーズは、実車構造を1/24スケールで限界まで再現し、作っていて本当のカウンタックを組み上げる感覚を味わえるのがコンセプトのシリーズです。
今回紹介するLP400のパッケージ。
フジミ渾身の究極モデル
このキットが発売されたのはスーパーカーブームから10年は経った1987年で、当時の現役モデルだった5000QVがまず出たと言われており、その後どんどんバリエーションが増え、LP400、ウルフ1号車、ウルフ2号車、LP500R、5000S、5000QV、25thアニバーサリーがラインナップされています。
カウンタックLP400の箱の中身。
部品数が箱いっぱいに入っていて、一度出したら収まらなくなるとカーモデラーの間では有名です(笑)。
特徴としては、リヤトランクを除くすべての箇所が実車どおりに開閉可能。シャシーは、鋼管を鳥籠のように組んだフレーム構造や、幾多の細いアームで構成された足回りを再現。エンジンルームはハッチを開けたところから見える上半分だけ再現したいわゆる「上げ底」でなく完全再現で、それどころかミッションケース、排気管、ラジエーター、冷却管、イグニッションコイル、オイルフィルター等、完成後は見えない部分までほぼ全ての補機類も再現しています。
これがエンスージアストモデル・カウンタックのシャシーです。まるでアルミボディを外した実車シャシーを見ているようで、模型なら1/12スケールでやるような事を1/24スケールに落とし込んだ究極のモデルとなっています。
しかし代償として部品の数と細かさが大変な事になり組み立てが難しく、さらに精度と強度が不足している箇所が多くて、組立て途中で挫折する人が少なくないという難キットです。
現在は2010年にアオシマから新たなカウンタックのキットが発売され、内部メカの精密さと開閉ギミックはソコソコに抑えた代わりに、3D CAD/CAM設計による作りやすさと正確なプロポーションを売りとして人気を博し、今の時代に合った新世代のカウンタックプラモと言われています。
ですが私にとって最高のカウンタックは今でもフジミのエンスージアストモデルです。
このキットを組んでいると、部品の1つ1つに実車構造を限界まで取り込もうとした設計者の強い執念と情熱が伝わってきて、その前には作りにくいとか精度が甘いとかは些細な事でどうでもよくなってしまう…それほど圧倒的な魅力を感じるのです。
今回はこのエンスージアストモデルのカウンタックを、LP400を例にその特徴と組み立てにおける修正ポイントを解説していこうと思います。
エンジン
エンジンだけで55点もの部品で構成されていて、素組みでもこのクオリティです。オルタネーターにファンベルト、コンプレッサーはもとよりエンジンマウントまで再現しており、ギヤボックス先端のシフトロッドは、シャシーに組み込むと運転席のシフトゲート内に収まるというこだわり具合!単体で飾るための置台も付いています。
惜しい個所はプロポーション的に左右ヘッドの間が開き過ぎているところでしょうか。
エンジンをシャシーに取り付けたところ。
前述通りエンジンを囲む補機類がほぼ完全再現されています。特に左右ラジエーターから伸びた冷却管が実際にエンジン左下のウォーターポンプに入っていく実車構造の再現は脱帽物です。
ディテールアップポイントは、電装系の配線が省略されているので、特に目立つヘッドカバー上のプラグコードを追加してやれば見栄えが随分上がります。
これは私が以前製作したディテールアップを施した物です。
プラグコードの追加以外にも、イグニッションケーブル、キャブレター周辺の燃料パイプ、インレットマニホールド、スロットルリンケージ、オイルチューブ、オイルサーモスタット等を追加しています。
リヤサスペンション&シャシー
以降のモデルにはないLP400の特徴であるA型ロワアームをはじめ、細い鋼管パイプの複雑な組み合わせによるダブルウィッシュボーンの足回りが再現されています。ただ素組みのままではタイヤの位置がボディとうまく合わないので調整が必要なのですが、そこはまた後述します。
シャシー構造に関しては、1/24スケールでは板状の部品の上にエンジンの底だけ再現した部品や排気管を貼り付ける、もしくは一体成型されているというシンプルな設計が普通なのですが、このキットはその方式をとらずに実車と同じく鳥籠フレームを再現しているので、エンジンブロック側面から出ている12本の排気集合管がサイレンサーを経由してマフラーカッターまで伸びていたり、デフケースと駆動輪がドライブシャフトで連結していたりと、本当に実車を組み立てている気分になってきます。
フロントサスペンション
フロントサスの構造も実車構造を忠実に再現しておりアップライトの形までそっくりです。
またタイヤの取り付けはハブボルトが再現されていてこれに差し込む形になっており、こんなの1/24では前代未聞で、付けてしまえばわからなくなるのに、ここにも実車を組み立てている感覚を楽しんでもらおうという設計者の意図が表れています。ただハブボルトはとても細くて折れやすいので、扱いには注意が必要です。
そしてこちらもホイール位置の調整が必要で、後輪と合わせて後述します。
ボンネットトランク内
ボンネットフードが開閉して内部が再現されているカウンタックのプラモは、1/24スケールでは後にも先にもこれだけだと思います。
空調ダクト、バッテリー、ブレーキブースター、クラッチポンプ、ラッパ型ホーン、ラックハウジングが再現されており、前輪を動かすタイロッドは、ちゃんとラックハウジングの中を通って動作します。
インテリア
インテリアは、シフトゲートや灰皿、ルームランプが別パーツ化されていて立体的な作りで、特にシートベルトは金具まで再現されている凝り様です。ベルト本体は組立図に印刷されている黒い帯を切り取る仕様ですが、そうすると切り口断面に紙の白地が出るので黒い紙を切って使いました。
ただ残念ながら5000QV用の部品がそのまま使われている箇所がいくつかありツメが甘いです。
具体的には、
l アクセルペダルが吊り下げ式(LP400はオルガン式)
l メーターが7連(LP400は8連)
l プッシュスイッチ列がメーターバイザー内にある(LP400はメーターバイザー外の左下)
の3点。
メーターとスイッチ列はバイザーに貼る水転写シールになっているため修正は難しいですがアクセルは簡単で、ペダル部品からアクセルだけ切り取り、ひっくり返して床に取り付ければOKです。
シャシーの調整
シャシーを組み立てたらそこにボディをかぶせるのですが、カウンタックはボディ側面下端が強く絞り込まれたデザインになっているので、その合いはかなりタイトです。
まず先にフロント側を入れてからリヤ側を入れるのですが、その時タイヤハウス内側の角が干渉します。無理に入れようとすると破損の危険があるので、写真のマジックでマークしてある部分を切り飛ばしておけば入りやすくなります。
足回りの調整
このキット最大の難所で、ボディとシャシーを組むと実車に比べて腰高な上に、タイヤがフェンダーから飛び出します。
こうなってしまった理由として、先に発売されたらしい5000QVがオーバフェンダーを装備してローボディを廃止したモデルだったので、そのセッティングのままLP400を出してしまったからではないかと言われています。
そんなわけでLP400らしい格好良いスタイルにするには、足回りの修正が必要となります。
リヤサス調整前(左)と調整後(右)。
まずA型ロワアームの根本を切り詰めてトレッド幅を短くし、中に0.3mm真鍮線を仕込んで再度繋ぎ合わせます。この時繋ぎ合わせる角度を変えて車高を低く調整します。ロワアームの位置が決まったらそこにアップライトを地面と垂直に取り付け、それに合わせて他のアームやダンパーを切り詰めて取り付けます。この例では補強のためアッパーアームを1.0mm真鍮線に置き換えました。
フロントサス調整前(左)と調整後(右)。
フロントサスも同じ手順で修正しますが、こちらは前輪を動かすためのタイロッドがあるので、その調整も忘れないようにします。
途中アッパーアームが折れてしまったので1.0mmプラ棒に置き換えました。黄色い部分は、押出しピン痕をパテ修正した物です。
調整後の側面。LP400らしいローボディのスタイリングになりました。
写真左:調整後 写真右:調整前
正しい車高の目安としては、後輪のフェンダーアーチの斜め部分にタイヤ上端が軽く隠れるくらいで、それに前輪も合わせます。
調整後のトレッド幅。
写真左:調整後 写真右:調整前
LP400の正しいトレッド幅は、ホイールが奥に引っ込んだツラウチ状態です。そのためサスアームは結構切り詰める事になります。
また別の調整方法としてホイールの内側を削ってオフセットを変えるという手もあります。
ドアの調整
このキットではドアを上げた時に見えるダンパーを、両端をL字型に曲げた金属線で表現しているのですが、ただ差し込んであるだけなのでこれが引っかかってドアがうまく開きません。
そこでフェンダー側の断面部品を加工します。
裏側の金属線を引っかける出っ張り部分を切り飛ばし、代わりにプラ板で金属線の可動軸を作りました。また金属線の長さをドア側1/3ほどカットして、内部で引っかかりにくくしました。
実際に組んでみたところです。ドアがうまく開閉するかチェックします。
金属線を差し込んであるスリットは、キットのままでは上下動に対して幅が足りないので広げてあります。
このカウンタックのドアは、モデラーの間で常に議題に上がるドアヒンジ先端がフェンダーに沈み込む実車構造を再現しておらず、模型で一般的なアーム式ヒンジになっています。それがどれだけ大変な事なのかはわかっていますが、徹底的にこだわるエンスージアストモデルだけに残念な仕様です。
リトラクタブルヘッドライトの調整
組立図を見ると、リトラクタブルヘッドライトの取り付けは、赤丸で囲った突起のある方が内側となっていますが、そのように組もうとすると形が全然合いません。これ指定ミスで左右逆です。
左右を入れ替えて突起が外側のほうで組むとピッタリ入ります。それに合わせて押さえ部品のB11とB12も左右逆となります。
正しく組んだリトラクタブルヘッドライト。
完成品作例
以上の調整を施した上で細部のディテールアップを加えて、私が以前2011年に制作した作例です。
奥にあるのは当時一緒に作ったエンスージアストモデルのLP500Rです。
LP400にエアロパーツとワイドタイヤを装着したモデルなので、足回りの位置をLP400と変えてあります。
内装は革張りの継ぎ目彫り、フロアカーペット自作、省略されているサイドエアフレッシャーとイグニッションキーを追加しています。
エンジン内部は上述のディテールアップを行っています。
またエンジンフード自体も側面の放熱口をくり抜いてメッシュを張ったり裏側のディテールを再現したり、オープン用ステーを追加しています。
ボンネットフード内は、電気ケーブル、エアコン圧力ホース、ブレーキホースといった配線を加えています。他にもバッテリーのディテール追加、ホーンのラッパを開口しました。
単体ディスプレイ用に作った物で、LP400の改良モデルであるLP400S用のエンジンに改造しています。
後記
このエンスージアストシリーズのカウンタックも発売から早30年経ちましたが、開閉ギミックの多さ、内部メカの圧倒的精密感、そして実車を組み立てている気分を味わえるという点において、最新のアオシマ製キットを持ってしても引導を渡すに至たらず、スーパーカーブームの真っただ中に発売されたあの東京マルイの1/24モデル同様、カウンタックプラモのレジェンドだと思います。
ご興味を持たれた方はぜひ一度トライしてみてはいかがでしょうか。
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